午後の酩酊

I need to be myself.

0319

ようやく法的に大人と認められる年齢になった。

19歳から20歳になったところで急に何かが変わるわけではない。逆に何かを失うわけでもない。ただいつも通り日付が変わって、新しい一日が始まって。たぶん、それだけ。普通の人に見られる私は、それでも普通の人が経験する以上の事を、経験してきたのではないかと思う。

 

辛い事が多かったのは嘘じゃない。

そのために悟ってしまった事も多かった。

 

幼い頃から、実年齢より年上に見られる事が多かったのは、そのせいだと思う。

それを嫌だと思った事はないけれど、いつだったか、「子供は子供らしくすればいいの。何も怖がる事はないんだよ。」と言った女の人の声が頭から離れない。

絶対に甘えたり、駄々をこねたりしない子だったと、親戚によく言われる。その言葉を聞いて、年下の従姉妹と自分を比べて「ああ、確かにそんな気がする」と思ったのは中学生の頃だったか。

特に羨ましくも、悲しくもなかった。

ただ私はそうして生きてきたのだと思った。

出来るだけ傷つかないように、面倒事にならないように、怒らせないように。後になって今よりも酷い仕打ちを受けるくらいなら、その場で私がじっと我慢すれば良いと、そういった道を歩いてきただけのことだと、諦観していた。それが逃げだと思うなら、それでもいい。どちらがましなのかは私が何よりもよく知っている。

 

鉛筆やシャーペン、ボールペンを刺された痕が、今でも刺青の後のように残っている。

恐怖でしかなかった親という絶対的な支配者。それに怯え、理不尽な仕打ちに怒りや憎しみを覚え、悔しさと悲しささえも経験し尽くしたら、その支配者は、最早どうでも良い存在に成り下がっていた。

そう思うまでに何をどれだけ犠牲にしてきたかは私には分からないけど。

もしかしたら大切に持っておくべきものも、一緒にどこかへ捨ててしまったのかもしれない。

 

痣や体の腫れはいつか消えてなくなってしまうけど、この青黒い痕はいつでも私に事実を知らせてくれる。

あの日々は本当にあったのだと。 

 

20歳になったら、もう生きるしかない。死ぬならその前だと中学の頃に決めた。

首をくくった高校2年の夏。死ねなかった事を今更悔いても仕方がない。

迎えてしまったのだから、自分に誓ったこれだけは守っていかなければならない。

そうでなければ私は自分さえも裏切ることになってしまう。

 

だから今日も元気に一日を過ごそう。そしてまた明日を迎える。それでいい。

 

20歳の誕生日おめでとう、私。